口腔腫瘍 (口腔がん)

口腔腫瘍 (口腔がん)

当科では高い水準の口腔腫瘍に対する治療を行っています。

当科では口腔、あご(上顎・下顎)ならびにその隣接組織に生じる腫瘍を取り扱っております。
顎顔面領域に発生する腫瘍性疾患は良性腫瘍から前がん病変、口腔がんなどその性格は多岐にわたり、正確な診断に基づく、適切な処置を適切な時期に行う事が大切です。そのため、当科担当医、病理医、放射線診断医による精密な診断と、麻酔科、放射線治療医、整形外科、形成外科および耳鼻咽喉科をはじめとする各科との協力体制の下に当科では高い水準の口腔腫瘍に対する治療を行っています。

口腔は、咀嚼、嚥下、構音という重要な機能を有する臓器であり、 口腔がんの治療にあたっては癌(がん)の根治性(治癒)とともに機能温存が重要な問題となることになります。 口腔がんは、最近のさまざまな治療法の進歩により、治る時代へと徐々に変化しつつあり、 各種再建法の発展により、より良好な社会復帰が可能となってきています。
また、当科の特徴である進行口腔がんに対する臓器温存を目的とした選択的動注化学放射線療法は良好な治療成績となってきています。

口腔がんの症状

口腔がんの症状としては、治りにくい潰瘍や“しこり”が特徴と言えます。 また、進んだものでは、舌の運動障害や知覚異常、開口障害、嚥下障害などの症状が伴ってくることもあります。

口腔がんの検査

口腔がんの検査は、見ることと触ることを最初に行います。あごの下やくびのリンパ節に転移しやすいため口腔内ばかりでなく口腔外も丁寧に視診・触診しリンパ節の腫れ具合なども確認します。がんが疑われる場合には、組織の一部を穿刺して細胞を採取して顕微鏡で調べる細胞診や組織を採取する生検を行います。生検によりがんの診断が確定すると画像検査によってがんの進行度や転移を調べます。画像検査にはCT検査、MRI検査、超音波検査、PET検査などがあります。
これらの検査により口腔がんの病期を決定します。また、口腔がんは、のど、食道、胃などのがんが重複して発生していることがありますので上部消化管の精査のため内視鏡検査も行います。

口腔がんの治療法

治療法は、進行度によって異なります。 手術療法、放射線療法、化学療法などがありますが、初期のものでは、手術を選択される場合が多く、当科では口腔機能の回復につとめ、腫瘍切除後の顎口腔領域の再建外科を行い、患者さんの早期の社会復帰を目指した総合的な治療を積極的に行っています。 また、進行したものでは、それぞれの治療法を組み合わせた集学的治療法が行なわれます。

超選択的動注化学放射線治療

特に当科では、進行がんに対し、放射線科の協力のもと選択的動注化学放射線療法を施行しており、口腔機能の温存と治癒率の向上の両面を満足させるべく、 患者さんひとり一人にあった適切な治療を目指し、良好な治療成績を治めています。

1980年代後半にテネシー大学のRobbinsらにより始められました。抗癌剤を大量にがんの栄養動脈にカテーテルを用いて直接注射するすると共に放射線治療を行います。その治療によりがんの消失率は非常に高いものでした。その後動脈内に投与しなくても治療成績は変わらないという論文がオランダのRaschから出され、その後は世界的にはあまり行われなくなりました。口腔がんの治療は基本的に外科的に切除して再建することが標準的です。飲み込みと話しをする機能は手術で治療してもある程度は回復できます。しかし、私たちが口腔の機能として重要と考えている咀嚼(咬んでものを食べる)の回復は出来ません。そこで当科では治療後に咀嚼機能の回復が出来るかという点を重要視して治療法を選択しています。つまり小さいがんや切除して再建しても舌の機能が十分期待できる症例には手術を、手術により咀嚼機能が喪失してしまう症例には超選択的動注化学放射線治療が有効と考えています。月に1回の抗癌剤の動脈内投与を3回行うとともに放射線治療を行うため3〜4か月の入院期間が必要になりますが、進行がんでも手術を全くせずに70%以上の5年生存率が得られています。

●舌癌:舌部分切除後、縫縮写真

●舌癌:外側大腿皮弁による再建術

●上顎歯肉癌:動注化学放射線治療写真

●舌癌:動注化学放射線治療写真

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